コレクション: 江國香織

孤独がおしよせるのは、たとえば
夜のホームに降りたったとき。
あなたからの電話を待っているとき。
シーツの中でうずくまっているとき。
 
移ろい変わっていくのはさみしくてたまらないのに、
いつか終わるということが、
とりとめもない今を、曖昧に肯定してくれる。

うす暗い浴室で、
わたしだけの孤独が指先にゆらめくのを
じっと見つめて、あしたを待っている。


  • プロフィール

    江國香織(えくに・かおり)
    1964年東京生まれ。
    1987年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、1989年「409ラドクリフ」でフェミナ賞を受賞。以後、坪田譲治文学賞、紫式部文学賞、路傍の石文学賞、山本周五郎賞の受賞を経て、2004年には『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞。さらに島清恋愛文学賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『去年の雪』『ひとりでカラカサさしてゆく』など。