コレクション: 森見登美彦

今在る自分は、最善だろうか。
憧憬と劣等感がまとわりついて離れない。
暴風に煽られ、立ちすくむ。灯を探す。

騒々しい人波の隙間を縫って
声が残響する。
「惜しまずに、進め。」

世界を置き去りにしても、
君の隣を行きたいのだ。

持て余していた意志が、
時は来たとばかりに身体に満ちていく。
今からでも遅くない。
地面を蹴った足から、夜が走り出す。