コレクション: 森見登美彦

今在る自分は、最善だろうか。
憧憬と劣等感がまとわりついて離れない。
暴風に煽られ、立ちすくむ。灯を探す。

騒々しい人波の隙間を縫って
声が残響する。
「惜しまずに、進め。」

世界を置き去りにしても、
君の隣を行きたいのだ。

持て余していた意志が、
時は来たとばかりに身体に満ちていく。
今からでも遅くない。
地面を蹴った足から、夜が走り出す。


  • プロフィール

    森見登美彦(もりみ・とみひこ)
    1979年、奈良県生まれ。作家。京都大学在学中に執筆した『太陽の塔』で2003年、第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。2006年『夜は短し歩けよ乙女』で第20回山本周五郎賞を受賞、第137回直木賞の候補となり、翌年の第4回本屋大賞の2位を獲得した。2010年『ペンギン・ハイウェイ』で第31回日本SF大賞、2014年『聖なる怠け者の冒険』で第2回京都本大賞、2017年『夜行』で第7回広島本大賞、2019年『熱帯』で第6回高校生直木賞を受賞したほか、映像化・舞台化された著書も多数。

    【森見登美彦氏コメント】
     まさか自分の小説が、皆さんの指先を飾ることになろうとは……。「そんなこと本当にできるんですか?」と思っておりましたが、各色それぞれ、「なるほど!」というものに仕上がって、たいへん嬉しく思っております。個人的には『四畳半神話大系』がお気に入りです。「乙女」のように軽やかなとき、「四畳半」のようにひねくれているとき、「ペンギン」のように爽やかなとき、「有頂天」のようにしんみりするとき、「宵山」のように妖艶なとき。いろいろな気分や状況に合わせて、ご活用いただければ幸甚であります。