コレクション: 夏目漱石

光が強くなるほどに影はいよいよ濃く、喜びと憂いは離れがたく表裏である。
嵐の如き感情や関係に絡め取られ、利己主義に自惚れる人世は空しい。
自我を手放し、自然の理に身を任せれば苦は遠ざかる。
けれども恋や嫉妬や、何かを成して死にたいという生への固執がそれを複雑なものにする。
理想は蜃気楼だ。手を伸ばせども掴むことは終ぞ叶わぬ。人間は悩ましき生き物である。
その愚かさに辟易しながらも、日々細々と暮らしを立ててこそ、生きて甲斐ある命は貴い。